ohi-sama’s blog

晴れときどきPerfume

彼女の世界地図

ぐるんぐるん 2014.9.13 宮城セキスイハイムスーパーアリーナ 追記

先日の仙台公演でこんなことがありました
まだ泡沫アイドルだったころ、仙台のあるCDショップの一角を借りてイベントをやるんですが、誰も立ち止まろうともしない。
でも、企画してくれたイベンターの方が良い人で、いつもPerfumeを大切にしてくれた。
彼はその後会社を辞めてしまったが、自分たちは彼のことをずっと気に掛けていて、今日はライブに来てくれている。それがとても嬉しい。
そんなあーちゃんのMCでした。

で、PTAのコーナーに入るんですが、声出しのグループ分けがモロにそのCDショップの名前。
「◎タヤー!!!」

ハイハイ、西脇隊長がやれと言うならやりますけど。これでもファンの端くれですからね……
 
「ツ△ヤーーー!!!!!!!!!!」
 
7500人動員した大宣伝ですわ。(笑)

もうね、いままで散々売上に協力してきた他のCDショップの面目は丸潰れ。テロリスト綾香恐るべし。

もちろん、商売的にはアウトです。アミューズの会長が見たら、カツ丼2杯事件どころじゃないでしょう。私だって管理職なら、彼女を叱りますよ。
でも、ワールドツアーを控えた大事な時期に、あーちゃんは商売より恩を取った。おそらく、一時的な感情ではなくて、彼女なりの考えがあってやった。

前の記事に、あーちゃんと事務所、レコード会社とは海外進出の考え方に齟齬があるのではないかと書きました。
あーちゃんが仙台で言ってたのは、自分は日本が好きだ、世界の人に日本の音楽を聴いてもらいたい、中田ヤスタカの音楽を広めたい、端的に言えばそういうことです。

でも、現実の「世界」はそうでないことを私達は知っています。プレスリー・ビートルズ以来、POPミュージックは基本的に英語で歌うものであり、英米のヒットチャートに載ることが成功の証とされてきました。流行は英米からの輸入品でした。
なんのことはない。第二次世界大戦戦勝国の基準が、いまだに音楽に適用され続けているのです。

そういうなか、あくまで日本に軸足を置くというあーちゃんの発言は、リアルな現実を直視すれば滑稽ですらあります。
同じ会場を使ってNY公演をするBABYMETALは、レディ・ガガの前座を何度も務めて全米を回っている。Perfumeはそんな認識で本当にやる気あるのかという批判だって出る。
10年前の言葉なら、グローバルスタンダードに対して、どう対応するのかということです。

少し話は変わりますが、幕末期に平田篤胤という国学者がいまして、教科書的には尊皇攘夷思想の基礎を作ったとなっているのですが、実際に西洋人が日本のすぐ近くに迫るという現実を目にして、彼が独自の世界地図を書いて情勢を説明しようとするんですね。

普通、地図というのは、現実の地形を測量して、計算をもとに図面化するものですから、世界地図の形は万国共通のはずなんですよ。国境線の争いとかを除けば。
ところが、彼の地図というのは三次元で表現されていて、まず八百万の神が鎮座する天上界があって、そこから神々が降りてくるエレベーターのような道がある。
エレベーターの降りた先は地上の中心で、神々が作られた国である日本がある。周りには高麗・唐・天竺なんてのを並べて、地の果てにオランダ・イギリス・アメリカなど西洋諸国を配置する。※1

つまり平田篤胤が彼の世界地図で説明したかったのは、外国との力関係などではなく、日本とは元来どのような存在かということであって、世界の中心には自分がある、その自分とは神代の時代まで遡る先祖から受け継いだ霊的な存在なのだということなんだと思います。
もちろん、このような認識は西洋列強の圧倒的な軍事力と科学技術を前にしては改めざるを得ず、開国と西洋のルールを受け容れ、明治維新へと突き進むことになるのですが。
(これを詳しく解説しているのが、長山靖生偽史冒険世界」です。※2)

話を戻すと、西脇綾香の精神世界の地図というのは、これと似通っているんじゃないかと。天上界にいままでPerfumeを支えてくれた人がいる。地上とのエレベーターを言霊がつなぐ。世界の中心には、故郷の広島やBEE-HIVE寮がある。
彼女の強さを説明するというなら、結局はこういうところに行き着くしかないんです。自分というものが世界の中心にあり、目に見えないもので支えられているという実感。
だからこそ、商売を犠牲にしても恩を取った。海外進出も、距離をおいて時間を取りながら進めた。彼女の世界地図からは十分に合理的なんです。

人間は客観的な正しさの他に、主観の世界である実存というものが必要で、心の満足がなければ生きていけないという面があります。自分は何者なのか、なぜ生きるのか、死とは何か、幸せとは何か。
きっといまの現状は、あーちゃんが考えに考えた末の結論なんでしょう。
これからもそういうことに拘りながら、それゆえ批判も受けながら、Perfumeも我々ファンも生きていくんだと思います。現実ってつくづく難しいです。
 
 
 
 
 
 
※補足
※1※2 訂正あります。「八百万の神が鎮座する天上界があって、そこから神々が降りてくるエレベーターのような道がある。」と書きましたが、天上界ではなく「黄泉の国」です。
偽史冒険世界」によれば、平田篤胤の考え(著書:霊能真柱)だと、日本は天界に最も近く、しかも地中を通じて黄泉の国に通じているという理解でした。
なお、この本は1995年のオウム真理教事件を契機に書かれたもので、肥大化する自意識と国家意識が陰謀論を生み出すのではないかという視点から、戦前の軍部や財界を巻き込んだ偽書について解説をしたものです。
「なぜ世界を目指すのか」「世界とは何か、日本とは何か」が、今後Perfumeを論ずる上で重要になると考え取り上げました。
公共図書館にも所蔵されていることが多いので、機会がありましたらぜひご覧下さい。

 

偽史冒険世界―カルト本の百年 (ちくま文庫)

偽史冒険世界―カルト本の百年 (ちくま文庫)

 

 

 

偽史冒険世界―カルト本の百年

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