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晴れときどきPerfume

Perfumeとセカイ(中)

Perfumeとセカイ(上) - ohi-sama’s blog

3.GAME〜Perfumeの少年少女世界

andorei氏が以前から論じられていたことに、「Perfumeの必殺技は歌詞と振り付けのズレにある」というものがあります。
詳しくはandorei氏の過去記事を参照していただくとして、要約すればPerfumeには歌詞世界と平行した振り付けや映像の世界があるということであって、その二つの世界の繋がりが表現の本質としてあったわけです。
その意味で、Perfumeも言語システムの外側にいます。しかし、歌詞から全く干渉を受けずに振り付けが成立するわけもなく、自由な解釈を許す歌詞があってはじめてそれも可能となります。

コンピューターシティ、エレクトロワールド、Twincle Snow Powdery Snow 、ポリリズムDream Fighter、Voice、未来のミュージアム、DreamLand…
以前論じた「僕とキミ」が登場人物となる「僕キミ作品群」ですが、特にポリリズムまでの初期の作品は、近未来テクノポップユニットとしての中核となる楽曲です。

そして、ここでは登場人物の「キミ」に具体的な実体がありません。
キミは「僕の心の中のキミ」であって、ちょうど子供が「ごっこ遊び」をする際の架空のキャラクターのような存在です。キミがいることで子供には内面の世界が生まれます。

僕はきっとキミとどこかで繋がっていて、いつか一緒になる時が来る。もちろん現実にはそんなことは希有なのですが、それを信じ続けることで永遠に自分の内面の少年少女が生き続ける。
Perfumeのファンは自分も含めて、どこかそのような感情を持ち続けているのではないかと思います。

このような世界観はアルバム「GAME」に結実します。ここでは徹底して少年少女の視点で「重なり合う/重なり合わない」内面が語られます。
しかし、これが全く悲劇的ではない。そこにはコミュニケーションの誤謬さえ喜びとして捉える子供の視点があります。

とても大事なキミの想いは 無駄にならない 世界は廻る
絶対的な信頼と 対照的な行動 絶望的な運命が やがて恋に変わる

伝わらないことは世界の断絶ではないのです。
ポリリズムに込められた「世界は廻る」という一言が内面の殻を打ち破り、失敗とぬか喜びを繰り返しながらも、決して諦めることなく子供が戯れるように平行世界を繋いでいきます。
これこそが「GAME」というタイトルの想いであり、Perfumeが何かを救ったとすれば、自分はまずこの一点を挙げます。

4.edge 〜断絶するPerfume

しかし、この少年少女の視点は長くは続きませんでした。
誰だっていつかは死んでしまうでしょう
だったらその前に私の
一番硬くて尖った部分を
ぶつけて see new world 

ポリリズム的価値観を完全否定してみせたのがedgeでした。
ここで注目しなければいけないのは、Perfumeの展開するパラレルワールドには、二つの方向性があるということです。
一つはGAME収録曲に代表されるような、個人の内面の「重なり合う/重なり合わない」という意味でのパラレルワールド
もう一つは、edge に代表される「彼岸の世界」としてのパラレルワールド。ここではない世界にきっと自分の望む何かがある。それには命を懸ける価値があるという発想です。

例えば Spending all my time はこうでした。
Spending all, Spending, Spending all my time. Loving you,Loving, Loving you forever. 

有限である命と時間を使い、永遠の愛を手に入れたい。そんなこと、初めから無理な願いなのです。
叶わぬ想いの表現ですから、Perfumeは呪詛のように"Spending all my time. Loving you forever. "と繰り返します。

アルバム「Level 3」ではこのような曲もありました。
ぜんまい仕掛けの微笑みは ずっと変わらない
いつでもキミのボタンで 世界変えるわ

仮に、「キミのボタンで世界を変える」と彼女に言われて、そういう恋愛が長続きするかといえば、うーんという感じがします。自分の価値も主体性も放棄して、永遠に変わらない何かを手に入れたい。
そんな願いが強ければ強いほど、人間関係的には失敗していくんでしょう。
clockwork の行く先には既に終わりが見えているのです。    

このアルバムの最後はこのように締めくくられます。
夢の中に住みたくて 光が包む痛みのない国
花の香りが引き寄せる 帰りたくないから
Come Again. Come Again. まだ戻れるよ
キミの腕をボクが引くから

先に、Perfumeの歌詞のキミとは「僕の心の中のキミ」であって、それがあるから内面の世界が生まれるのだと書きました。
それが少年少女の内面であれば、赤い糸を信じることで満足していられるでしょう。しかし、現実世界のキミは厳然たる他者であって、そこで誰しもがどうにもならない距離感とコミュニケーションの不可能性という絶望の壁にぶつかるのです。

結局、現世で報われない内面の世界をどこかで救済しようとすれば、それは何らかの形で宗教観に頼ることになります。DreamLandで歌われたように現実ではない「彼岸の世界」を設定せざるを得なくなるということです。

東日本大震災の後に発表されたGLITTERでは、Perfumeを「現世に現れた釈迦三尊像」と評された方がいました。歌詞の内容を、福島第一原発の事故の暗喩と捉えた方もいました。andorei氏からもPerfumeは現代の巫女であるという意見があったように思います。

しかし、それ以前に、Perfumeの立ち位置が、少年少女のそれからは大きく変わっていたことも注目されて良いと思います。。
また、「はじけて 消えてもいいよ」と歌う"SEVENTH HEAVEN"が、「世界は廻る」ことを信じるポリリズムとは正反対の方向を示しており、それゆえGAMEには収録されなかったと見ることも出来るでしょう。

Perfumeには「少年少女の世界」と「彼岸の世界」という、相反するかのような二つの世界観が絡まり合いながら並存しているのです。